素晴らしい日本人に聞くシリーズ

第2章 神職として 人として
 『続く幸運 馬上での感慨』


伊勢神宮 内宮参道にて

藤原美津子:上野様が、伊勢神宮の二十年に一度の式年遷宮の他に、さらに、鹿島神宮の十二年に一度の『御船祭』の際に宮司をなさっていたことも、稀有なことだと思うのですが。

上野貞文様:十二年に一度の午年に、四月には鹿島神宮から香取神宮に参り、香取神宮で大祭を行います。九月は、香取神宮から鹿島神宮のお船の方へお迎えにいらっしゃいます。

藤原美津子:午年に二回あるのですか。

上野貞文様:そうです。四月の香取神宮での大祭では、鹿島神宮の船の中に、お供えものを積んで宮司以下で香取神宮へ向かいます。

水上で神前やお供えものを皆船から船へ移して、祭壇にお供えした後、鹿島神宮の宮司も乗り込んで祝詞をあげ、それを香取神宮の宮司以下が脇で確認をしているわけです。

その後ご挨拶をして、元の船に乗り移って帰るという要領でしております。九月はその反対です。

藤原美津子:あのときは、藤原も御船に乗せていただいて…

上野貞文様:十二年前の九月でしたね。その時は鹿島神宮から出ていますので。今年も午年なので、九月二日に執り行われます。あれから丁度十二年…。

藤原美津子:もうそんなになるのですね。

上野貞文様:今までは、屋根のついた観光船みたいな船に百人とか百人近い人が乗っていたわけですが、今回そういうのがない。

その代わり百艘以上の小船が「御座船」という御神輿を載せた船の前後を繋がって、一時間三十分くらいかけて、香取神宮の方へ行くのです。『御船祭』は鹿島神宮でも香取神宮でも、一番大きな大変なお祭りです。

平成九年の十一月に鹿島神宮に行かせていただいたとき『御船祭』に遭遇したわけです。二年くらい準備期間がありまして、奉賛旗をいただくとか、牡馬の調達や船の調達がありました。馬も三十頭くらい福島から連れてきて、それに一人一人乗るわけです。

上野様

藤原美津子:そうですか。上野様も乗られたのですか。

上野貞文様:もちろん乗りました。

藤原美津子:意外と高いですよね。

上野貞文様:そう、目線が急に高くなりました。私はいつも低いところから見ていますから、馬に乗ると本当に天下をとったみたいな感じになります。本当に、ありがたいなと思うことをいろいろとさせていただきました。だから、大変幸運だったなと思うのです。


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