素晴らしい日本人に聞くシリーズ
第3章 受け継がれる心 『今上天皇陛下のお姿』
上野貞文様: それとやはり、私は、幸いにして天皇陛下がここの祖神様にご拝礼なさるときのお姿を間近に拝見しているのです。
これに、本当に心打たれ、まさに生き神様だと思いまして、一歩でも二歩でも天皇陛下のああいうお姿に近づきたいものだなと思っております。私には大きなお手本があるわけです。
藤原美津子: 素晴らしいお手本を。
上野貞文様: そこが本当にありがたいのです。天皇陛下は、どれほどの重圧の掛かった日々をお過ごしになっていらっしゃるか、日本国の命運を担っていらっしゃるか。
そして、国民の幸せを祈り込んでいるわけです。それは、総理大臣などとは比較になりません。総理大臣は、政治家の一番中心になっているけれど、総理大臣を辞めたら気楽なものです。
天皇陛下は、お命のある限り、国家と国民を守り続けているわけだから、この重圧というのはすさまじいです。それを耐え忍びながら、神命を果たさなくてはいけないわけです。逃げるわけにいかないので、やはり祖神様に御縋りする他ない。
そのお姿を、特に平成二年のご即位の礼が済んだ後に神宮にご拝礼なさったときの、それも外宮も内宮も私だけ拝見しているのです。
大宮司も小宮司も祭典にはおいでだったのだけど、踞(うずくま)って顔を挙げませんから。私は否応なしに天皇陛下のご拝礼が始まる、終わるというところを見定めなくてはなりません。
秋篠宮殿下、亡くなられた高円宮様殿下のお二方がお供でおいでになっているのですけど、一番最終の奥の御門はくぐれないわけです。
藤原美津子: 手前のあそこですね。
上野貞文様: 御門の外に控えていないといけない。殿下と御門ごとによって皆下がられていきますから、特別な方だけが最終の御門をくぐられるわけです、天皇陛下と一緒に。だから両殿下もくぐることはできない。
その御門のときには、御帳がかかって中の様子は絶対に分かりませんから、その連絡をしなくちゃいけない。そういうお役目をいただいていたので、もうしっかりと拝見できたわけです。畏れ多いことですけれども。
そのときの天皇陛下の一挙手一投足というのですか、お姿、その日のその場面を思い出すと涙目になります、人にお話をするときは。
そのくらいものすごく感動し「有り難いな、日本人というのは何と有り難いことだ」と思いました。
だけど、片や共産主義者で天皇制廃止を主張する人達は、「天皇陛下は皇居の中で優雅に国民の税金を使って過ごしている」と、そんな言い方をするのです、生徒に。
藤原美津子: そうですね。そういう言い方をしますね。あのおじさんとどこが違うのだと言い方をしますね。
上野貞文様: そう、分からないからいい加減なことを子供達に吹き込んでしまうのです。それを、先生の言うことだからと子供達は真に受けてしまうではないですか。
たとえば、ここに二年間勉強に来ていた神職のある方が、小学校五年生くらいのときに、先生から折伏(しゃくぶく)されて洗脳されてしまっていた。
それで、ここで尊王愛国といくら言っても、本当に自分のものにならなくて大変悩んでいたらしいのです。
ところが、天皇陛下が平成二年の十一月においでになってご拝礼なさったときに、そのお車からお姿を、宇治橋入って行在所にお入りになるまでの間、学生だから宇治橋の近い所で御迎えし、また御見送りをしたわけです。
そのときのお車の中のお姿を拝見して、それで、今までのもやもやが、パーッと霧が晴れたように吹っ切れたというのです。その喜びを真っ先に青森の親元に伝えたと言っていました。もうすっきりしましたと言って。
藤原美津子: それは、言葉ではないのですね。そのときの…
上野貞文様: 言葉ではない。天皇陛下にはそれだけのお力があるのです。
それは、今の百二十五代の天皇陛下が、御一代で、努力してそうなっているのではないのです。歴代の天皇陛下の天皇霊、天皇陛下の御心をずっと繋いで、繋いできて、現在の天皇陛下に伝わっているのです。
それが、簡単に言えば大きなオーラが立ち込めているわけです、周りに。
藤原美津子: そうですね。
上野貞文様: だから、一般の国民は、どんなに努力したって天皇陛下の、あのお姿は演出できません。
第3章 受け継がれる心 『問われる社会貢献・存在意義』
藤原美津子: 実は、事業継承の小冊子を書かせていただいたのでお持ちいたしました。明治天皇陛下が十七歳で、天地神明に誓って『五箇条の御誓文』を奏上して維新の方針を誓い申し上げてスタートされたというお話を思うと、「会社を継ぐ」ということは、やはり、こういう気持ちで日本人として引き継ぐべきじゃないかなと思いまして、最後のところに『五箇条の御誓文』を入れさせていただいたのです。
しかし、それを読んだ同じ年ぐらいの若い人が、「そうは言っても、天皇陛下って別格だから、いくら側近の人が作ったといっても、あれだけの雰囲気の時に、ひるむことなく出来るっていうのは、普通の人では無理ですよ。」と言ったのですね。確かにそれは無理なのですけど、そういう言葉がすぐ返ってきたのですよ。
でも、一方で、ある経営者の方は、「天皇陛下のお力は自分たちと全然違うとはいえ、やはり同じ日本国民という意味で、それを大小の関係で、自分の会社に当てはめていくということも大事だと思う」という話をしてくださったのですね。
上野貞文様: 今、日本人は軍国主義から民主国家になったと言っているけれど、明治のときにすでに民主国家だから。
藤原美津子: 五箇条のご誓文を読むとそうですよね。
上野貞文様: 聖徳太子の十七条憲法もこれと同じ。
藤原美津子: 藤原は、天照大神様のときから、「権限あれども行使せず」とも、八百万の神様を集めて会議を起こされたということでも、あのときの
天孫降臨イメージ
上野貞文様: 『
独善でやっているわけではないのです。皆が協力して定めたわけだから、皆の総意のもとに定めて天皇の先祖が天下ってくるわけです。
藤原美津子: そうですね。日本の始まりはそういうところから始まっているのですよということですよね。
上野貞文様: そうです。だから、戦後は、本当に履き違えているわけです。明治のこれでも広く会議を起こしたものですから。
藤原美津子: 本当に民主主義。
上野貞文様: 民主主義そのものなのです。
藤原美津子: この小冊子、もしよろしかったら、お目通しいただけたらと存じます。実は、会社の社長さんが交代するときって、意外といつの間にか変わっていたというか、法的な手続きだけを取って、ひどいときは社員も知らないうちに代わっているということが結構あるのです。
やはり、神社できちっと社長交代を、「この人からこの人に代わります」とけじめを示し、次の社長さんは「自分が会社内を統率して世の中に貢献することをここに誓います」と宣誓してから、社長を引き受けるべきだということを、ここに書いたのですけど。
上野貞文様:天皇陛下が、天皇陛下にお成りになるときには、「ご即位の礼」をお挙げになるのです。
平成二年十一月に即位の礼のときは、解体して東京の宮殿に持って来られて、傷んだ所は修繕して組立ててお挙げになったわけです。
高御座イメージ
そのときに、天皇様が高御座の中にお入りになって、詔書を祝詞のようなものを読んでいらっしゃいます。
その中で、「昭和天皇陛下の御心を心として天皇の使命を果たします」と世界に向かって宣言されています。
会社でも同じです。大きいとか小さいにかかわらず、会社の社長の交代にもきちんとした申し送りがなければ駄目です。
藤原美津子: 私もそう思うのですね。一代限りならいざ知らず、代を交代させてまでも存続させていいというのは、それだけの社会性がなくてはいけないですし、「ただ儲けるだけ」というのは論外で、「自分の会社は何を以って貢献するのか」をということを、もっとはっきりとさせた上で事業を引き継ぐべきじゃないのかなと思いましたので、今回「事業継承」のテーマで書かせていただきました。ただ、天皇陛下が、そういうご宣言をされるのは存じ上げませんでした。
上野貞文様: されています、堂々と。昭和天皇陛下が昭和三年にご即位の礼をお挙げになったときには、京都の紫宸殿でなさいました。
そのときは、総理大臣が国民を代表して、下に降りて庭から、天皇陛下万歳をしたのです。高御座というのは、床の上に御神輿の大きなようなものがあり、その中に天皇陛下がお入りになるわけです。
平成二年は、海部さんが総理大臣だったのですが、高御座と同じ床の上で天皇陛下万歳をしたので、問題になったのです。だけど、(前回は庭に降りてしています。)
藤原美津子: そうしなきゃいけないですよね。
上野貞文様: 昭和三年の時は、紫宸殿の上に上がらずに外で万歳をしています。そこが、戦前と戦後の違いです。
藤原美津子: それは調べれば、わかりますか。お誓いの言葉(※)とか。
上野貞文様: お誓いの言葉までは、どうか公になっているかどうかわかりませんけれど、テレビで放送していましたので、そのときに注目してテレビを拝見していました。
昭和天皇の御心を心としてということは、しっかりと頭に入っています。そのときの天皇様のお言葉は忘れられません。
藤原美津子: 本日は、いろいろと貴重なお話をうかがうことができました。ありがとうございました。上野様から伺った貴重なお話を多くの方にお伝えしたいと存じます。
編集注:即位の礼の際の天皇陛下のお言葉
即位礼正殿の儀
平成二年十一月十二日(月)(宮殿)
以下宮内庁ホームページの「主な式典におけるおことば(平成2年)」からの引用です。
さきに、日本国憲法及び皇室典範の定めるところによって皇位を継承しましたが、ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。
このときに当たり、改めて、御父昭和天皇の六十余年にわたる御在位の間、いかなるときも、国民と苦楽を共にされた御心を心として、常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓い、国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。