素晴らしい日本人に聞くシリーズ
第二章 水の安全に挑む!②
すべてに通じる「三方良し」
田尻惠保様: 日刊工業新聞が作った『百年経営の会』というものがあります。
古いところでは奈良時代から続いている金剛組さん等がいて、百年以上経った会社が会員になっています。
当社はまだ百八年で、老舗から見れば若い方なのです。
長寿企業は日本の特質であって、外国にはあまりありません。そういうことを研究している先生たちも『百年経営の会』には来ます。
藤原: その会は私もすごく興味があります。
親の志を子が受け継ぐという、やはり「縦系列」なのですね。
田尻惠保様: 先日、『百年経営の会』で、どのような経営理念を持っている会社が百年続いているのかということをリサーチしました。
やはり、「三方良し」のような経営理念を持っているところが長続きしているのです。
田尻成美様: これは「三方良し」にも繋がる、日本人の「与える」文化のためではないかと思います。
「ギブ・アンド・テイク」ではなくて、「ギブ・アンド・ギブ」。与えているうちに巡り巡って自分にも返ってきて、「ああ、ありがたい。お陰様」と、そういう循環がある気がするのです。
藤原: 「してやっている」のではなく、「させていただいている」という感覚ですね。
「入れるのが先でなく、出すのが先」とも言われますね。
(企業理念として掲げられている三方良し)
田尻惠保様: 呼吸法と同じですね。
呼吸する時のコツは、吐く方に意識を集中することです。吐く方を意識すると、息は自然に入ってくる。
ですから、どんな呼吸法もつまりは吐く技法なのです。実践すると体験的に分かります。
人間はもともと利己主義で、自分の生命の自己保存本能があります。だから、自分にとってよくあるようにと行動するわけです。
しかし、そうではなく「与える」ということ、呼吸で言えば吐く方を意識すれば、自然に入ってくるのです。
人はそのままでは、自己中心的な方に流れます。
だから、与えて、与えて、与える。 ただし、その言葉通りにただ与えているだけなら、破滅してしまいます。
だから、利他もダメということです。
もちろん自分だけも良くないので、中間がいったいどこにあるかということですが、
元来が利己主義なのだから、与える方を意識したほうがバランスがとれるということなのだろうと思います。
それを社会全体で見れば「三方良し」、自分も良ければ、相手も良い、世間も良いということになるのでしょう。
これは商売のことだけでなく、日常生活の何事にも通じることだと思います。
何をやっていても一緒にいる相手が楽しそうではなければ、こちらも楽しくなりませんからね。
藤原: 企業が、発展存続たるためには「三方良し」の思いが根底に必要ですね。
長寿企業の秘訣の一つといえるのではないでしょうか。