素晴らしい日本人に聞くシリーズ
第二章 形が機能を語っている
高尾院長:弟の事故以来、私はこのように精神的に非常に不安定だったと思います。高校時代の倫社の授業が私の救いでした。
授業の中で先生が心理学的な見方を教えて下さって救われたような気持ちになりました。
この捉え方のお陰で、その時期、私は心を整理することができ、自分を保てたような気がします。そして、更に救いを求めるように大学で心理学を目指しました。
入学した大学では、東大の精神科医の先生が教授に来てくださっていました。3~4年生の時はその先生が副院長をされている精神病院のお手伝いをし、実習しました。
卒論はその病院の外来患者の中学生の女の子のケーススタディで、テーマは『家族力動』でした。
「家族力動」とは発症原因を家族の関係性から解いていく考え方です。
それは子と親の2世代だけではなく、祖父母を含める3世代の関係性、そこに流れる力動を切り口にする捉え方です。
私は自分自身が救われた心理学を極め、今度は苦しむ方にお役に立ちたいと思っていました。
しかし、心理学の道は私にとっては精神的にあまりに苦しく、その道を諦めました。結局、商社に就職したのですが、全然適性が無く、1年で辞めてしまいました。

学生の頃からイラスト等を描いていたこともあり、25歳からデザインを学び直しました。
横浜でデザインルームを始める方に求められ、入社し、それから3年間休みなしで徹底的に仕事をし、その中でデザインの基礎を身につけていきました。
ちょうどコーポレート・アイデンティティ(企業の個性・特徴を明確に提示し、イメージの統一を図るための戦略)が流行った頃で、 企業がみんなロゴを変えたり……、グラフィックデザイナーや編集がもてはやされた時代でした。
その後、青山の事務所に入ってまた勉強して、それから独立したのです。
アートディレクター、編集者として様々な仕事をしました。
一般的にはデザインするというと、「格好良く、美しくすること」という認識だと思いますが、デザインとは、クライアントの意図を明確に伝えることを目的にしています。
ですから、内容を明確に捉えていないとできないものなのです。訴える「事業」や「組織」の中身が把握できていないとデザインできない。
その「中身」や「コンセプト」が「デザインワーク」というフィルターを通して磨き上げられ、感動を伴って伝わっていく……、私が目指したデザインはそういうことでした。
(会員完全予約制の整骨院)
藤原:それがすごいですね。普通のデザイナーさんはそこまで考えないでデザインしてしまうと思うのですが……。
高尾院長:当たり前ですが、中身が分からないと伝えられないと思うのです。
体もそうなのだと思います。どうしてこういう形になっているかという理由がある。形が機能を語っているのです。
例えば、背骨(脊柱を構成する脊椎)にしても背中の側と内臓の側でこのように形が違うということは、それぞれの機能も違うのです。
内臓の側にはクッション(椎間円板)があります。形も積み木型で、いかにも重いものを乗せるのに都合の良い形になっていますね。
つまり、こちらの方が体を支える機能をしています。比べて、背中側の形はトゲトゲで何かを乗せるには適していません。
ということは、当然、「頭」という重いものは内臓側に乗せていただきたい。
ところが、普通の人は背中側(トゲの形の方)で支えようとするから脊髄が痛むのです。そして、この姿勢を続けると腰椎症、頚椎症を引き起こす可能性が高くなります。

(人体模型で背骨の構造について説明いただきました)
形が機能を語っている、形あるものはすべて、中(なか=機能)を表している。だから、本来の機能、つまりその器官や部位の「お役目」がやり易いように、形がもし歪んでいれば、本来の形に戻していかなくてはなりません。
今、私が『タカオ セルフケア メソッド』でやっていることもアートディレクターとして追求していたことと結局は同じだと感じることがあります。
つまり、相手が本来持っている本当の形に修正し、磨き上げていくことなのです。傷んでいるということは、その方の本当のものが形として表れていないということです。